神々の黄昏

随分と時間が経過した気がしますが、テニスの全豪オープンが終了しました。もう2週間経ってるのかあ。はやいぜ。ともかく準決と決勝は見たんですが、ジョコビッチが強かったですね。終わってみればどっちもストレート、特に決勝はヤマはありましたが、終始確実にジョコが押していたと思います。あんだけ拾われてバコバコ打たれてたら、似たようなタイプのマレーもやる気なくすというか、いや勿論マレーはそこでやる気なくさず、こうしぶとくやらなきゃいけないんですが、まあでもやっぱりジョコビッチが最初から最後まで上手でしたね。昨年の全米以降、すっかりブレイクした感じです。強さに安定感が出てきた。でもポテンシャルはあったもんなあ。また夏の土、芝でどこまで延ばせるのかが楽しみです。
しかし気になるのはやはりフェデラー。4大大会で丸1年も決勝に出ていないってのは、ここ何年かの彼を知っていると本当に驚くばかりです。そりゃ普通は決勝どころかベスト8に入るのだって相当に難しいわけですが、でもフェデラーフェデラーですからね。どのスポーツにもたまにいると思うのですが、やっぱり特別なテニスをする人でした。多分いわゆる天才ってのだと思います。見てて異次元だったもんなあ。その彼と最近唯一拮抗してたのが、パワフルでガッツ溢れるプレイを見せてくれるナダルだったのでここ数年は特に盛り上がっていたのでしょう。今回の全豪でナダル敗退のとき、スペインのフェレーロが勝ってるのに一番意気消沈してたメディアがスペインのだったと聞いて、フェレーロには気の毒だけどそれほどこの二人が輝いてたんだよなと再認識しました。ほんと凄かったもんなあ。ただここ最近のフェデラーは、フットワークもパワーもそんなに落ちてはいないのですが、よく言われるようにやはり勝利への執念というか、ここ一番の強さが欠けているようにも見えます。そうなると、今回のジョコビッチや一昨年全米のデルポトロ戦のように、大事なポイントを落として落として競り負けることが増える。そういうところでビシっとやってたからこそのフェデラーだったわけで、できなくなれば試合も落とすことが多くなるのでしょう。とはわかっているんですが、切ないですね。その圧倒的な天才ぶりと、台頭してきたナダルとの鍔迫り合いを知っているだけに、落ちていくフェデラーは見たくない。見たくないけど、でもやっぱりファンとしては見続けないといけないかなあ、などと思います。いや勿論そんな義務とかはないんですが。そりゃないんですが、でもあんなに楽しませてもらったしね。フェデラーがグダグダになって引退するまで、いやグダグダなフェデラーもあんまり想像できないんだけど、愚痴りながらも応援したいなあ、などとフェデラーのいない全豪決勝を見ながら思った次第であります。
似たようなことは最近の将棋でも思ったりします。羽生さんじゃなくてね。今日の朝日杯は決勝で競り負けてましたが、でも羽生さんは相変わらずもの凄く強い。特に最近の早指し棋戦の強さはちょっと異様です。いつ衰えるんだこの人は。序盤中盤は将棋大好き親父、終盤は勝負の鬼なんて言われてますが、20年間もトップとして君臨してるってのは凄いですね。恐るべし伊達世代(今作った)。反面、ここ最近の谷川さんが調子落としてて、なんかもにゃります。勝率4割近いもんなあ。今40前くらいの人と将棋の話をすると絶対に出てくる方ですが、やっぱりこの人も天才だったと思います。21歳で名人はもう破られるのかわからない記録だし、それからも羽生世代とタイトル戦で鎬を削ってやってきたわけです。しかしここ数年は全然タイトルに絡めてない、というか今期は棋聖戦王座戦も決勝トーナメントの遥か前で敗退し、順位戦も4連勝後4連敗、期待の王位リーグも黒星スタートと、本当にいいところがない。かつて本当に強かった人が、こうまで負け続けてると相当に切ないものがあります。特に同郷人なので勝手に応援していた身としては……。まあ勝手に応援してて勝手にがっかりするのも失礼な話なわけですが、やはり残念は残念です。ともあれこちらも、かつての天才がなだらかに落ちていくのを、ゆったりとした気分で応援することが必要かなとも思います。いやほんとに頼まれてもいないのにあれなんですけどね。
ただ今後も、天才の落日を多く見ることになるんだなあと考えると、ちょっと切ない気分になるなあ。今日はそういう気分でした。