マリみて 由乃&令SS



 なかなかお風呂から上がってこない令ちゃんが心配になって、お風呂場を覗いてみると、令ちゃんは散文的な意味で溶けていた。誰もいなくなった浴槽には、幾本かの髪の毛と、溶け切れなかったらしい爪が少し浮かんでいた。
 

 とりあえず飲んでみた。令ちゃんが溶けた水は、やっぱりどこか令ちゃんのような味がした。木1本分の桜の花びらのような、女の子の涙の砂糖漬けのような。あまりパンチが効いてないのも、どことなく許せてしまいそうな。
 胃の中でまで令ちゃんと抱き合えるのは、やっぱり嬉しい。




 試しに金魚蜂の水をその水にしてみた。翌日見てみると、黒い金魚がピンク色に染まっていた。
 令ちゃんらしいな、と笑ってしまった。


 令ちゃんが溶けた水を再び沸かして、今度は私が浸かった。緩やかに絡まるお湯が鎖骨の辺りを撫でるのを、まるで令ちゃんの舌と手が混じったように感じる。全身を撫で上げる愛撫に、私はうっとりと目を閉じる。
 洗面器でそのお湯をすくって、大きく口に流し込んだ。流れ込む令ちゃん混じりの水は、するすると私の中に納まっていく。その満足感に満ちた感触は、多少の吐き気も快感に変える。私の胃の中で、令ちゃんは柔らかくダンスを踊っていた。ピンク色に染まりゆく自分を感じた。
 令ちゃんと溶け合う。身体の内側からも外側からも令ちゃんに愛される。純粋に令ちゃんと一つになれたことが、ただ嬉しかった。思わず感謝のお祈りをマリア様にしてしまうほど。世界の人全てに微笑むことが出来そうな幸福感。

 今の私は、確実に愛から構成されている。その感覚が、たまらなかった。