漫画 『雷火』 原作:寺島優 作画:藤原カムイ ★★★

 惜しい!! 物凄く惜しい。読んだのは徹夜明けの漫画喫茶、それもあのスラダンを退けて、ということで、2巻でつまらなかったらやめようと思ってたんです。でも2巻で引き込まれ、5巻の時点では既に興奮状態でした。マジ、来た!! と思いました。
 好きなんですよね。こういう国取りストーリー。舞台の邪馬台国はそれっぽいし、妙な術もファンタジーっぽくていい。大友氏に似てる絵もいい感じだし、何より古代っぽい。魏とクナ国とライカとの交錯はとても惹きつけられました。そして、何より壱与とライカを物凄く好きになれた。自分のことしか知らなかった二人が、徐々に国を見据えていく。登場人物も盛り立てて、これはBASARAクラスか? と期待大だったのですが――
 五房の行。これが不幸の始まり。こういうの出して、主人公をパーフェクトにして欲しくなかった。どのジャンルでもそうなんですが、主人公がパーフェクトになった瞬間、漫画はつまらなくなると思うんです。ライカは人間ですらなくなった。これじゃもう、何がなんだか分からない。壱与がライカの瞳の中に帝星を見たシーンが好きだったし、ウツキを心配するライカがとてもいい感じだったのに。
 15巻辺りのクコチヒコのセリフがすべてです。『なんのかのと理由をつけたって、結局は惚れた女が心配なのさ。オレは、そんなライカが好きだ』
 少なくとも、久しぶりに主人公とヒロインを普通に好きになれた漫画でした。だから、凄く惜しいし残念でした。